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推理小説として問題作の『アクロイド殺し』

アガサ・クリスティー / 早川書房 (2012/8/1)

アガサ・クリスティーによる有名な推理小説『アクロイド殺し』。私にとっては初めてのアガサ・クリスティー。この小説は推理小説として、果たしてこの構成が良いのか悪いのかと問題になった作品。そのことを以前から知っていたので読んでみました。

何よりもまず、この小説を読もうとしている人は何の予備知識もなく読むことをお勧めしたいです。私はこの小説がどうして問題になったのかを事前に知っていたので、実を言うとほとんど楽しめませんでした。問題になったこと自体が有名すぎて犯人を知ってしまっていたのです。怪しい行動にすぐに気づいてしまいます。

推理小説としてはこれぞ推理小説という感じでした。探偵のエルキュール・ポアロは、登場人物たちの行動、アリバイ、時間に注目して事件を読み解きます。ポアロ自身が言うように「体系的・論理的」に解きます。私が今まで読んできた叙述トリック型のミステリー(推理小説)とは全然違いました。

「ミステリー」というと多くの場合では叙述トリックに気付ければ少し裏側が見えてきます。でもこの小説はまず事件が起きて、その事件を解くことに焦点を当てています。出来るだけ多くの情報を集め、得られた情報を処理し、解きほぐしていきます。これぞ「推理」小説です。

私はいつも「ミステリー」というジャンルには違和感があって、「ミステリー」と「推理小説」はちょっと違うジャンルだと思っています。もしかすると「探偵小説」と言った方がこの小説をうまく言い表しているのかもしれません。

この小説にも叙述トリックはあるものの、やはり推理がメイン。この小説を読みながら読者が本当に力を注いで推理をすると、もしかすると犯人が誰か分かるのかもしれません。登場人物たちの行動を表にしないと解けそうもなく、面倒すぎるので私はやってみようとも思いませんが。そうするより、小説を読み進めていけばポアロが勝手に事件を解き明かしてくれます。自動的に事件が解けるって素晴らしい…!

ただ、もし本当に推理をしてみたい人がいるなら、この小説は「問題作」故にそれに適しているのかちょっと不安なところです。推理をするならアガサ・クリスティーの別の作品にしておいた方がいいかもしれません。

この小説を読み始めた時、それぞれの登場人物の名前が似ていて、その名前と人物をなかなか結びつけられず苦労しました。人物を名前で呼ばずに名字(家族名)で呼ばれるとかなり困ります。「アクロイド」「ミス・アクロイド」「ミセス・アクロイド」と登場人物が呼び分けられます。しっかりと登場人物たちを記憶しておかないとすらすらと読み進められません。カタカナの名前はどうしてこんなに覚えにくいのでしょう…。

この小説では探偵が登場人物たちの行動を細かく確認しつつ、おかしな点を突っつきます。作者はよくこれを書けたなぁと感心してしまいました。普通の小説のようにストーリー主導型ではないのでプロットを作るのがものすごく大変そうです。「A は分かっているが B はまだ分かっていない。C は B と関連があるかのように見えるが、実は関係がない」などと緻密に練っておかねばならないのでしょう。

緻密さには感心はしたのですが、推理が小説のメインになってしまっているので私としてはあまり楽しめませんでした。それに今回は読み始める前から、…もっと言えば購入前から犯人を知っていたので、楽しめなさに拍車が掛かっていました。この小説を読み終え、私には「ミステリー」が合っていて、「サスペンス+少しの推理」という感じの小説が好みだと分かりました。

なお、この小説の何が「問題」なのかを知りたい人は Wikipedia をどうぞ。思いっきりネタバレなので注意してください。

アガサ・クリスティー / 早川書房 (2012/8/1)