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世界のことを知りたい

読書習慣を付けたい。…マンガも本だよね?…バナナはおやつだよね?

子供の頃に感じた幻想的な世界に、大人による不条理を加えた『夜市』

本・マンガ
恒川 光太郎 / KADOKAWA / 角川書店 (2012/10/1)

子供の頃の、周りのものが不思議に溢れていた世界を描いたような作品。幻想的でした。ジャンルがホラー小説だったので最初は身構えて読んでしまいましたが、どうもホラーではないと気付いてからは安心して読めました。ホラー小説というものは私が思っているほど、よくあるような怖い話ではないのかもしれません。

子供の頃を思い起こすと、大人になった今では興味が湧かないようなものに誰しも興味を持っていたと思います。道端にある石とか、よく分からないシールとか。子供の頃はカエルとかトンボとかを触れましたが、今では怖くて触れません…。この小説はそういう子供の目から見た世界を感じます。そこに大人の世界の不条理さを加え、全体的には暗めのストーリー。読んでいると子供の頃を思い出してしまいます。

この小説には「夜市」と「風の古道」の2つの作品が入っています。どちらも主人公の子供が幻想的な世界に入り込んでしまうのが導入になっています。「夜市」は暗い中で光るものにつられ、「風の古道」は田舎にあるような舗装されていない道の探検へ。こうやって不思議な世界にするりと入り込んでしまいます。

私はこのストーリーを読みながら「そっちに行くと危ない、やめておけ」と思いながら読んだのですが、私の子供の頃も、歩いていてわざと知らない道に出ると何か高揚感があったのを覚えています。人のことは言えませんね。

どちらの作品でも、主人公は少し不安だけどわくわくするようなそんな幻想的な世界に入り込んでしまうのですが、その世界は子供には厳しい。それは大人が作った世界で、知識が無く、ある意味欲望に純粋な子供は餌食にされてしまいます。

世には子供が世界を救うような普通に考えるとおかしな作品がたくさんありますが、幻想的であるこの小説の方が子供の描かれ方が現実的です。「体は子供、頭脳は大人」というようなことがなく、妙に安心してしまいました

ストーリーはよく練られたものだという印象はそれほど持てませんでしたが、短編なので気楽に読み始められ、気楽に異世界に触れられます。「ファンタジー」というと今では冒険もののストーリーが多いのですが、「ファンタジー」にはこの小説のように幻想的な不思議な世界観もあって良いでしょう。

ただ小中学生の子供向けの小説かというとそうではないです。この小説で描かれる苦しさや決断は誰でも言葉の上では理解は出来るかもしれませんが、ある程度の人生経験が無いと実感が湧かないでしょう。

少し話は変わって、表紙が浮き立って見える金魚で綺麗です。子供の頃には心躍る金魚を前面に、背景は森林の暗闇です。その意味は分かって貰えるかと思います。

恒川 光太郎 / KADOKAWA / 角川書店 (2012/10/1)