読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

世界のことを知りたい

読書習慣を付けたい。…マンガも本だよね?…バナナはおやつだよね?

池上彰が選ぶ『世界を変えた10冊の本』。この一冊を読むと有名書10冊分を読んだことに?

本・マンガ
池上 彰 / 文藝春秋 (2014/3/14)

ニュースを分かりやすく説明する池上彰さんが選ぶ10冊の本。著者が好きな本を10冊挙げたと本かと思っていましたが、読んでみるとそうではなく、著者の視点で「世界を変えた」10冊を選んであります。

読んだ人が、内容に感動したり、感化されたり、危機感を抱いたりして、何らかの行動に出る。それによって人々が動き、ときには政府を動かし、新しい歴史が築かれていく。書物の持つ力は恐ろしいほどのものです。

『聖書』しかり、『コーラン』しかり、『資本論』も……。こうした本の存在は知っていても、実際に読んだ人は意外に少ないのではないでしょうか。古くて読みにくい、わかりにくい。そんな印象が、本を紐解くのを妨害しているのでしょう。

でも、読めば、そのダイナミズムに圧倒される本があります。驚くような主張に仰天してしまう内容のものもあります。一見とっつきにくくても、読み進むうちに、独特の論理に魅せられてしまう書もあります。

そんな書物を一〇冊に限って取り上げたのが、この本です。断して『世界を変えた10冊の本』。

もちろん「世界を変えた」本は他にもあるでしょうが、とりあえず私の独断で選びました。内容を知っておいて損はない書物ばかりです。

その10冊の本は、「アンネの日記」「聖書」「コーラン」「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」「資本論」「道標」「沈黙の春」「種の起源」「雇用、利子および貨幣の一般理論」「資本主義と自由」。この順番で書かれています。

世界で重要な出来事の元になった考え方や本を、歴史の流れに沿って紹介していくという試み。文章は読みやすく、分かりやすいです。

特に最初の3冊で、3つの宗教については分かりやすくまとまっていて、変な宗教解説本を読むよりも流れが理解できます。それに「ユダヤ教」→「キリスト教」→「イスラム教」という順番になっているのも良いです。イスラム教から見てキリスト教はどうなのかと書かれており、どのように違うのかを大雑把に把握できます。

ただこの本は宗教比較を目的としている訳ではなく、社会との関連で「アンネの日記」などが挙げられている訳で、「アンネの日記」の章ではユダヤ教を軽く説明すると共に、ユダヤ人迫害の問題が絡められています。「イスラム教」とジハード、イスラム教原理主義。これは「道標」の章でも。

全体的には宗教、経済、政治の視点で本を選んであります。大まかにいうと社会問題関連。なんとも池上さんらしい本です。社会問題に深く切り込んではいませんが、歴史の流れを本で感じられ、うまくまとまっています

「コーラン」は翻訳してはならないというのはこの本で初めて知りました。

『コーラン』は、「神の言葉」をアラビア語で記したもの。神が天使ジブリールに命じてアラビア語に訳させたのですから、アラビア語は「神に選ばれた言葉」ということになります。そこで『コーラン』は、神に選ばれた言葉で読むべきであって、アラビア語以外の言葉に訳すことはできないということになっています。

しかし、これではアラビア語ができない人は読むことができません。そこで、建前としては、「コーランの日本語解説書」という位置づけで、日本語訳が出版されるようになりました。

ところどころにこういう豆知識が書かれています。チェルノブイリの原発事故では、「チェルノブイリ」という地名がウクライナ語で「苦よもぎ」という意味で、これを「ヨハネの黙示録」の預言が当たったとする人がいる、というのもこの本で知りました。こういうことが非常にさらりと書かれています。

この1冊だけで、他の有名な本10冊のエッセンスを少し知れると考えると非常に良い本ではないでしょうか。「この本を読むと有名な本10冊分を読んだ気になれる」とまで言ってしまうのは言い過ぎだと思いますが、挙げられた本がどんな内容の本なのか、またはそのエッセンスを少し知れますし、ここに挙げられている本に対して読者に興味を持たせるには成功しています。そういう意味でおすすめできる本です。軽く読めますし。

池上 彰 / 文藝春秋 (2014/3/14)