世界のことを知りたい

読書習慣を付けたい。…マンガも本だよね?

英語に以前より注意して触れられるようになる『越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文』

英語を勉強している人でも誤訳しやすい英文を載せ、解説してある本。著者の越前敏弥さんはダン・ブラウンなどの小説を翻訳していて「ダ・ヴィンチ・コード」が有名。その著者が英語講師の経験などを生かして書いたのがこの本で、生徒が間違えやすいポイントなどを理解してくれているので解説も分かり易いです。

英文は全部で150題ほど。基礎編(A)、難問編(B)、超難問編(C)と3つのパートに分かれていて、量が多いのは基礎編です。ちょっといくつか問題を引用してみたいと思います。

A-03

Yesterday I met a novelist and poet.

A-06

You mustn't worry about your son. You shouldn't blame him either, or yourself.

基礎編の序盤から2つ載せてみました。かなり最初の方にある A-03 は冠詞の問題です。A-06 は正確に訳すとなると間違えるかもしれないという英文です。

日本語訳の答えを書いておくと、A-03 は「昨日、小説家でも詩人でもある人物と会った。」、A-06 は「息子のことを心配してはいけない。責めてもいけないし、自分自身を責めるのもだめだ。」です。A-06 は解説で、「最後の him either, or yourself を勝手に either him or yourself と読み換えていませんか。」と指摘されます。

either はどことどこに掛かっているのか。こういう細かな部分が訳出に大きく影響する英文がたくさん登場します。

A-18

A tree is known by its fruit.

これも短く簡単な英文に見えますが、訳し間違えてしまいます。解説を読むと自分がいかに英文をさらっと読んでしまっているのかに気付かされます。これの答えは「木は果実を見れば名前が分かる」。答えの訳は著者自身の訳です。この英文は解説にあるように、「The tree」ではなく「A tree」であること、「known by」の「by は判断の基準を指す」ことに気をつけると訳せます。

冠詞は大事ですね。日本人にとっては冠詞という概念がよく分からないので見落としがちですが、ここがヒントになっていることが多いです。日本人にとっては読解のヒントですが、彼らにとっては当然のことなのでしょう。ここに注意するだけでも英語がより理解できるようになります。基礎編は半分くらいが文法の確認問題で、文法を思い出させてくれたので良かったです。基礎編が簡単すぎるという人は難問編あたりからは楽しめると思います。

この本では「英語は左から右へ読む」ということと「否定省略文の使われ方」が特に勉強になりました。英語が母語の人は自然に行っていることですが、彼らは英語を左から右へ読んでいます。英語を外国語として勉強している人もその意識を持って英語を読もうというものです。英語を左から読んでいるとき、次に来る言葉や構造を予想しながら読んで読解に生かそうということです。

否定省略文については、下が正確に訳せるならたぶん理解しています。

1. This is mine. Not yours.
2. I don't feel like talking to him. Not today.
3. I feel like talking to him. Not yesterday.
4. She didn't have an umbrella. Not when it was raining.

1 は簡単に訳せると思いますが、4 が一番難しいです。でもこの本で構造を理解すると随分簡単に訳せるようになります。この本では何度も否定省略文の問題が出てきますので、読み終わる頃には訳し方を覚えてしまうことでしょう。

B-01

The best-known cricket players in that country from the early 1900's were Johnston, who had been often called successor to Thomas, and Ferrell.

こちらは難問編の最初の問題。「,」と「and」をどのように読み解くかが目的です。「and」はどことどこを繋いでいるのか。正確に読み解くにはこの文章のどこに注目をすれば良いのか。何となくでの訳出は止めて、理論的に読解するためにどこに気付けば良いのかを教えてくれます。

この本は「次に難しい英文が出てきますよ」と教えてくれるので気構えられますが、これが小説や映画でさらっと出てくると自分の誤訳に気付かないかもしれません。そう考えると、やはりこういう難しい英文にあらかじめ触れておいた方がいいです。この本で難しい文章のパターンを知ることが出来るので以前より少しは誤訳が減ることでしょう。

ただ私としては英語で文章を書く人は分かり易い文章を書いて欲しいとは思います。構造が分かり易くて意味が一通りに定まると最高です。なんていうのは理想的すぎますね。私も分かり易い日本語を書いていないこともありますし、構造を単純化すると文章の面白みがなくなってしまうかもしれません。

著者は職業柄、悪文にも対応する必要があり、そういう中で読解力を培ってきたのでしょう。大変そうです。著者も分かりにくい文章を書くのを止めてよと願っていたりするのかもしれません。あ、難文がないと仕事が減ってしまいますね。…願っていないかもしれません。