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チベット仏教の高僧、タムトク・リンポチェによる結婚観が僻みっぽくて親近感が湧く

池上彰
飛鳥新社 (2014/10/20)

池上彰と考える、仏教って何ですか?」の中に、タムトク・リンポチェによる結婚観が出てきます。これがなかなか人間的で、「酸っぱいブドウ」のようです。「タムトク・リンポチェ」はチベットの高僧で、彼と池上彰が対談した場面です。

私は五歳のときから仏の道に入ったので、幼い頃から本当にたくさんの勉強をしなければなりませんでした。それは確かに大変なことでした。他の子どもたちが遊んでいるのを見ると、楽しそうだなと思ったことはもちろんあります。

若い頃には、美しい女性を見ると、一緒にいたら楽しいだろうな、などと思ったことも時々ありました。しかし、もしそうした道に入ったら、どうなるのかを考えてみます。一般には、結婚は人生において大切なことと考えられています。結婚して家族ができ、子どもができればきっと幸せになれるだろうと希望を抱いて結婚します。

最初の何日か、あるいは何カ月かは非常に楽しい時期が続きます。それが何年かすると、夫婦の間にはいろいろな問題が生じます。周りの人たちを見ていると、よくわかります。夫婦間の問題は次第に大きくなり、嫉妬心やら猜疑心やらといった心配事が絶え間なく生じます。夫婦喧嘩のもとになり、ついには別れてしまったりします。

こうしたことが周りでたくさん起きているのを見て、自分が歩んできた道は間違っていなかったと信じられるようになりました。

「煩悩」の話ではありますが、非常に人間的で親近感の湧く回答です。「美しい女性と一緒にいたいけど、結婚は大変そうだから…」。タムトク・リンポチェが結婚しているかどうかが気になるところです。話の流れでは、タムトク・リンポチェの歩んできた道は結婚しない道だと思いますが。チベット仏教では「僧」は独身者の呼称のようなので結婚していないのかもしれません。

タムトク・リンポチェの言葉はモテない男性の僻みに聞こえて、とてもチベット仏教の高僧の言葉とは思えません。ですが、難しい言葉で色々とこねくり回した話をするのではなく、普通の会話のように答えていて好感が持てます。私は以前からチベット仏教に温和な印象を持っていましたが、こういうところにそれを感じます。この会話も冗談めかして話していたのでしょう。

ちなみに、リンポチェというのは聞き慣れない言葉かもしれませんが、高僧の敬称のようです。名前かと思っていました。本の中ではこう解説されています。

リンポチェとはチベット語で「宝」という意味で、高僧の尊称として使われます。日本語でいえば、親鸞上人の「上人」のようなものです。
池上彰
飛鳥新社 (2014/10/20)