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読書習慣を付けたい。…マンガも本だよね?

バロック時代の楽曲を大まかに掴める『正しい楽譜の読み方 -バッハからシューベルトまで-』

以前から楽譜を読むのは難しいと思っているのですが、この本はバロック時代の楽譜を読む際の手助けをしてくれます。バロック時代特有の楽譜の読み取り方を教えてくれます。この本は索引などを除いて全体で70ページほどで、さらりと読めました。

例えばバロック時代の楽譜はテンポの表記がありません。現代のように「四分音符=80」などとは書かれていません。それではどうするのか。拍子や時価、「通常テンポ」などからテンポを決定します。ただ舞曲はこの限りではない、ということが重要です。

この本は単に楽譜の読み方を説明するのに終始するのではなく、周辺知識も書いてくれています。バロック時代は舞踏が盛んで、それと音楽は切り離せない。そこで舞踏の説明が本の 1/3 ほどを占めます。お堅い説明ではなく、読みやすいです。

バロック時代は楽曲の8割ほどが舞曲だったらしいです。つまり舞踏用の音楽を作っていたということで、舞踏について知らなければ音楽についても分からない、ということです。

これまでバッハの曲を聞くとき、曲名に Gavotte(ガヴォット)、Bourree(ブレー/ブーレ)、Gigue(ジーグ)などが付いていて、これは何だろうと思っていたのですが、この本で舞踏の種類だと知りました。「サラバンド」という舞踏は次のように紹介されています。

史実としてはっきりしているのは、16世紀にスペイン方面で流行した大変に官能的、内面的、肉感的、美とスペクタクルのダンスであったことです。ダンサーに備わっているすべてのテクニックを披露する踊りで、そのあまりにもエロチックな要素がカトリック教会と皇帝の怒りに触れるところとなり、16世紀のスペインでは教会がこの踊りを禁止しました。

官能的なダンス…。これは良いことを知りました。早速見てみましょう!

…全然エロくありません…。期待して損をしてしまいました。サラバンドは本当にこの動画で合っていますか…? サラバンドはこれまで牧歌的な舞曲だとされていたようですが、実際は激しく、ステップは複雑で、32分音符がたくさん出てくる舞踊だったようです。ステップが複雑なのは上の動画で分かるのですが、エロさはあまり…。

他に「メヌエット」はこの言葉を聞いたことはありますが、どんなものか知りませんでした。メヌエットは身分の高い人が踊るもので、ステップが難しいようです。メヌエットは「デミクペ、デミクペ、サンプル、サンプル」というステップを踏むようで、サンプルに向かって音楽の抑揚を付ける。サンプルにアクセントを付けて踊りと調和させるのが重要とのことです。

メヌエットはこの動画が分かりやすいです。

「デミクペ、デミクペ、サンプル、サンプル」というステップをしっかりと見ることができます。メヌエットのステップは6拍で1つのサイクルで、デミクペで2拍を使い、膝を外側に向けます。それを二回、後は交互の足で前に進むサンプル、サンプル。知っておくと舞踊を見るのが楽しいですね。

第10章が一番高度な内容です。「楽譜の選び方、見方について」という章なのですが、市販の実用版楽譜の間違いを指摘しています。バロック時代の曲を演奏する人はこの章は嬉しいでしょう。ただ私はちょっと知識が追いついておらず、逆に疑問が多くなりました。

この本では楽譜の読み方よりも舞曲に対して詳しくなったような気がしますが、さらりと読めるバロック時代の楽曲の解説本として考えると優れています。得られるものは多かったです。

著者がこの一冊で完全に楽譜の正しい読み方が分かると考えているなら申し訳ないのですが、私としては入門書くらいかなという印象を受けました。色々な物事にあまり踏み込んで解説されてはいません。

バロック時代のことに詳しくない私でも読めますし、バロック時代の楽曲に対する知識がある人が読めばもっと得られることが多いと思います。この薄さで大まかにバロック時代のことを掴めたのは嬉しいです。