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読書習慣を付けたい。…マンガも本だよね?

一貫して心に焦点を当てた物語。完結したので1巻から通し読み『新世紀エヴァンゲリオン』

貞本 義行 (著), カラー (その他)
KADOKAWA / 角川書店 (2014/11/20)

マンガの「新世紀エヴァンゲリオン」が完結したとは知っていたのですが、やっと読みました。中盤のストーリーを忘れていたので1巻から。

出始めから驚いたのですが、もうエヴァンゲリオンの舞台の2015年なのですね。1巻の時から、現実の世界はあまり変わっていないように思います。スマートフォンが流行っているくらいでしょうか。

心に焦点を当てた物語

今1巻から通して読むと、やはり「新世紀エヴァンゲリオン」はシンジ君の心の成長や周りの登場人物の心を描いた作品なのだと感じます。以前はエヴァンゲリオンに登場する使徒とは何か、エヴァとは何かなどのストーリーの軸でない部分に気を取られてしまっていました。

難しい見方をしなくとも、心の問題が一貫して描かれています。A.T.フィールドでさえ心の障壁だと分かります。あまり掘り下げはありませんでしたが。今1巻の最後に書かれていることを読むと、その通りの進行になっていると実感できます。こちらはアニメ版の監督、庵野秀明さんの言葉です。

そこにいる14歳の少年は、他人との接触をこわがっています。
その行為を無駄だとし、自分を理解してもらおうという努力を放棄し、閉じた世界で生きようとしています。
地位親に捨てられたと感じたことから、自分はいらない人間なんだと一方的に思い込み、かといって自殺もできない、臆病な少年です。
そこにいる29歳の女性は、他人との接触を可能な限り軽くしています。
表層的なつきあいの中に逃げることで、自分を守ってきています。
二人とも、傷つくことが極端に怖いのです。
二人とも、いわゆる、物語の主人公としては積極さに欠け、不適当だと思われます。
だが、あえて彼らを主人公としました。
「生きていくことは、変化していくことだ」と云われます。
私はこの物語が終局を迎えた時、世界も、彼らも、変わっていて欲しい、という願いをこめて、この作品を始めました。

マンガ版とアニメ版は少し違いますが、どちらも心の変化を描いています。この言葉通りの展開になっていると思います。

シンジ君に対して厳しい

シンジ君は心が弱くてどうのこうのと言われていますが、マンガ版では私はそんなに心が弱い印象を受けませんでした。それよりも周りの大人がひどい。今読むとそれが際だって見えます。

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突然知らない場所に連れられて、「エヴァに乗って戦え」。そりゃ怖いです。そう言ったら「帰れ」。「おまえはここには必要のない人間だ」。周りの大人がシンジ君を追い込んでいます。傷だらけの綾波を見て、「乗るよ…」。

家出した時も厳しい。

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仕事以外で「あなたが必要だ」と言って欲しくて家出したわけですが、こういうのは誰しも経験があると思います。シンジ君は中学生ですし。それにシンジ君は帰属できる場所がなく、愛に飢えていた。そういう心は理解して欲しいところです。

綾波は相変わらず魅力的

エヴァンゲリオンの素晴らしい功績は綾波というキャラクターを生み出したところにもあります。エヴァンゲリオン以後のアニメやマンガなどでは必ずといって良いほど綾波の影響を受けたものが見られます。今はそれが落ち着いてきましたが。涼宮ハルヒが良い例ですね。

私は綾波がニコッとするシーンが好きです。

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何回見てもいいシーンですね。「私が死んでも代わりはいるもの…」という言葉は現代の病で、人間がモノになってしまっているのをうまく表しました。

終盤にみんなの心の問題が分かる

終盤になるとみんなどのようなことを考えて行動をしていたのか分かります。

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ちょっと駆け足だった感もありますが、みんな苦しみを抱えながら生きていたと分かります。もしかすると自分のことだけで精一杯で、周りに配慮することができなかったのかもしれません。

シンジ君の決断は…

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最後、シンジ君の決断によって世界が再構築されます。ここでやっとシンジ君は心の殻を破る決意をします。分からないけれどやってみよう、と。僕はまだ挑戦していない、と。すごく前向きな考え方です。

ストーリー中、シンジ君はずっと何が正しいのか分かりませんでした。大人に振り回され、情報が錯綜し、何を信じたら良いのか…。その中、最後に決断。

深読みしてはいけないかもしれませんが、結局は自分の心次第で世界の見え方が変わる、と言えるのかもしれません

これでエヴァンゲリオンも完結ですか。感慨深いものがあります。映画版も見たくなりました。

貞本 義行 (著), カラー (その他)
KADOKAWA / 角川書店 (2014/11/20)