自分を変えたい思いを赤裸々に語る『一人交換日記』『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』
永田カビさんのマンガを2冊読みました。「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」はネットで結構話題になっていましたね。「一人交換日記」はその続き。
非常に考えさせられる内容でした。簡単に言うと親からの束縛から思考を解放できないという状況を描いたマンガ。でも親に愛して欲しい。
私にはこの状況が結構分かります。心の発達段階として知られている話ですが、多くの人は、子供の頃の価値判断基準は親が絶対です。親の決定に従います。
そこから教師、道徳、良心などと判断基準が変わっていくのですが、このマンガの作者はまだ親が判断基準でした。
作者はそこに気付いてはいるものの、うまく抜け出せない。精神的にも良くない状況で、鬱だったり摂食障害だったり、頭に少しハゲがあったり。
そんな中、だれかに抱きしめられたいという欲求が強くなり、風俗に行く。これを描いたのが「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」。エロくないです。
意を決して風俗にいってみたけれど、思った通りの結果にはなりませんでした。
風俗っていいなぁ
ちょっと話がズレるのかもしれませんが、2つのマンガで描かれた風俗の体験では、お相手がとても優しく描かれています。
風俗ってこんなに優しい人がいるのですね。作者は何度か風俗を利用するのですが、お相手が全員優しい。
風俗ってそういうところなの?
ちょっと羨ましい…。
ちょっと利用してみたい。
でも「レズ風俗」というお店だからかもしれません。同性同士(同性というのかな?)だと優しいのかも。自分たちがマイノリティだという共感もあるかもしれないですし。
マンガのようにほんわかしたお相手は羨ましい限りです。
実家を出たのは正解
作者の両親は本当に厳しい。「一人交換日記」では作者の1冊目のマンガ「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」がついに家族に知られるという話があります。
最初、母親に見せようか見せまいか迷います。
私の経験上、「恥」を言い出す人にまともな人はいません。「コミュニティの恥」を理由に行動制限をしてきます。
私の親戚もそういう人たちです。アホだなぁといつも思っています。
作者は親が価値の基準になっている状況から逃れようと一人暮らしをしたり、それでも実家に戻ってしまったりします。
私は折りが合わないコミュニティは抜けた方が良いと思います。そんなコミュニティにコミットしても仕方ありません。
でも作者の難しいところは、それでも親に愛されたいという欲求があるところです。断ち切れれば良いんですけどね。
その後母親にマンガを見られてしまい、「このマンガは恥だ」という評価を受け取ります。父親に知らせるかどうか、母親も悩む。
この表現はすごくうまい。泥をかぶらされ、心を刺されそうになっているのです。こういう表現方法をうまく使っているマンガ家は少ないです。
マンガを読んだ母親から謝られました。いい話になるかと思いきや、作者の考えが見事。「イイハナシダナァー」で終わるマンガではありません。
作者には叔母の感想もぐさっときた様子。
承認欲求は満たされない返答ではあるのですが、私はマンガを描いてたくさんの人に読んでもらっている状況は羨ましいです。
自分の思いを人に読んでもらって、感想を言ってもらえる人はそう多くありません。叔母の感想にこの思いを少し感じます。
マンガでは父親も良くない人のように描かれていますが、上での父親の感想は価値観の相対化ができている。
作者から見た父親なので、本当のところはどういう人なのか分からなくなりました。
応援したくなる
Amazon のレビューを見ると星1つのコメントもありますが、私は LGBT に嫌悪感がないし、暗い考えを持った人にも拒絶感ではなく、共感を抱きます。応援したくなります。
この作者の思いを理解できない人の方を私は拒絶したい。
あまりお金がないと書かれていますが、1冊目のマンガがかなり売れた印象があります。印税がいつ入ってくるのか知りませんが、これだけ話題になってもそんなに儲からないのでしょうか。
絵の描き方もうまいし、自分の考えの伝え方もうまいし、赤裸々に書いている。私もマンガが書けたらなぁと思うことが時々あり、表現力が羨ましい限り。
作者がメンヘラだ、マンガが訳分からんというレビューもありますが、作者の考えを全く理解できない人は相当恵まれた人です。そういうことを考えなくて良かったのですから。
私はそういう人が存在することに驚きを隠せません。人生楽しくてたまらないのでしょう…。