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吸血鬼になってしまった人たちとその周り人たちの丁寧な心の描写『ハピネス』


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最近はパニックホラーもののマンガをよく読んでいるので、正直に言うと吸血鬼になってしまうストーリーはよく見かけます。

吸血鬼やゾンビなどになってしまうものはここ数年でかなり増えたような気がしますが、今回読んだ『ハピネス』(押見修造 著)は第一印象としてはそれらの中でもかなり心情描写が丁寧

吸血鬼ものの日常描写は『東京喰種トーキョーグール』が一風変わっていて良かったです。この作品では序盤は吸血鬼になってしまった人が人間の生活にどう溶け込み、見つからないようにするのかを描いています。

東京喰種トーキョーグール』では吸血鬼(グール)は人間が食べるものはほとんど食べられません。人間のように振る舞わねばすぐに通報されてしまうので、グールになってしまっても人間の食事を表情を変えずに我慢して咀嚼し飲み込み、後でこっそり吐く、という戦略でした。

こういう吸血鬼としての新しい設定、アイディアが入っていると新鮮で楽しいです。『東京喰種トーキョーグール』は戦闘シーンも面白いですし。

一方『ハピネス』はみんなが想像する吸血鬼と同じです。血を吸われると吸血鬼になる、明るいのがダメ、血を吸わないとおかしくなる、身体能力が上がる。十字架や聖水、ニンニクなどはまだ登場していません。

日本はキリスト教などの宗教はそんなに根付いていないため、十字架などのアイテムは登場させても意味不明です。「これでも食らえ」と十字架を掲げるシーンはドラキュラなどに出てきましたが、「何で十字架が吸血鬼に効くの?」と日本人は疑問を持ってしまいます。硫酸の方が確実ですよね。

ハピネス』は吸血鬼についての新しいアイディアは含まれていないものの、吸血鬼になってしまった人々のドラマを丁寧に描いています。その分ちょっと展開が遅いです。

近しい人との丁寧なストーリー描写

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夜に突然、吸血鬼に襲われ、何とか一命を取り留めた主人公。血のにおいに敏感になり、血を吸いたい欲求が我慢できなくなります。

でも何とか我慢して我慢して…の連続。

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主人公は血の渇望からおかしくなって、普段から昼食を買わされていたクラスメイトのいじめっ子を殴ってしまいます。ここからそのクラスメイトと吸血鬼としての展開が始まります。吸血鬼になってからの方が多くの人と関わっていくのは皮肉というか。

吸血鬼もののストーリーとしては、人間関係や生い立ちを描くのは結構珍しいです。押見修造さんが描いている作品は『惡の華』に見られるようにちょっとひねくれ者が多い。平凡な人がひねくれ者に絡まれるストーリーが好きなのでしょうか。

私は吸血鬼が見つかってしまったら『亜人』などのように国家権力や組織に狙われるのを考えますが、『ハピネス』ではそういう方向の展開は遅く、クラスメイトや親などの近しい人との関係が描かれます。

そういう意味では世界が狭いのですが、その分、思春期のヒューマンドラマが多め。『東京喰種トーキョーグール』のように戦闘がたくさんあるわけではありません。ただ描写が丁寧な分、展開は遅いです。

現在6巻まで刊行されていますが、まだあまり吸血鬼そのものについては語られていません。吸血鬼になってしまって困っている人たちが描かれています。

私は吸血鬼とは何か、どういう特性を持っているのか、それを利用できないのかとかが気になってしまうのですが、たぶん押見修造さんが描きたいのは人間(吸血鬼)の心なのでしょう。私には『亜人』の展開が本当にぴったりです。

ハピネス』では吸血鬼の特殊な性質は、どうやら血を吸うほど本物の吸血鬼と不死身に近付くようだ、というところしか分かっていません。あまり血を吸っていない・吸われていない人は「死ぬ」ようです。

面白い表現描写

押見修造さんは面白い表現方法を使っています。

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血を吸いたくておかしくなっている時の描写なのですが、視界が歪み、コマにゆらゆらと白い線が入っています。直感的に共感できる表現方法です。

私ならこれを主観視点で描きますが、このように視点が動く方が何が起きているのかは分かりやすいかもしれません。

あとこれも良かった。

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夜空を見上げるシーン。日中はつらいけど、夜空は綺麗だ。これはゴッホの「星月夜」を連想させます。線の描き方を見ても、たぶんこれを参考にしていると思います。

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今後の展開に期待

7巻では大きな展開が起こりそうで楽しみです。そろそろ舞台説明は終わり、吸血鬼に視点を置いて話が展開されることを期待しています。

私がずっと疑問に思っている、吸血鬼の数はどうなっているのかも解消されると嬉しいです。『ハピネス』ではこれまで主人公の周辺しか描かれていませんが、吸血鬼の数はかなり多いはずです。

少ないとおかしい。吸血鬼は人間から血を吸ったら殺すようにしているようなのですが、イレギュラーな吸血鬼がいます。すぐに吸血鬼の数が増えていきます。吸血鬼が日本か世界中の問題になっていないとおかしいです。

そういう『東京喰種トーキョーグール』的な展開は描かれそうもないのですが、著者ももちろん『東京喰種トーキョーグール』を読んでいるでしょうし、どう違ったストーリー展開にするのか期待しています。

私の予想は心情描写が中心となる、吸血鬼の苦しみを描くというものですが、それだけだとちょっと物足りないです。驚きの展開を期待したいのですが、優れた作品の『東京喰種トーキョーグール』があるため、結構難しそうです。こちらも吸血鬼の苦しみは描かれていますし。


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