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『モチベーション革命』に感心している人は知識が古く、時代遅れ


モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書 (NewsPicks Book)

現在 Amazon ランキング1位になっている「モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書」。

こんなに売れていて高評価な本なので、素晴らしい本なのだろうと思って読んだら既に知っていることばかりが書いてありました。この本が売れているっぽいのが不思議でなりません。

つまらなかった本のことを書くのもどうかと思うのですが、レビューでは高評価ばかりですので違った意見を残しておこうと思います。

この本に書かれていることは数年前からたくさん言われていることであり、実のところ情報としてはちょっと古い。この古い情報を読んで良かったと評価している人が多いため、私としてはかなり違和感があります。

この本では副題の「稼ぐために働きたくない世代」を「乾けない世代」と表現しています。この造語を流行らせたいのだと思いますが、ネーミングセンスがちょっと悪いです。「乾けない」だと意味が伝わらないため、流行らないでしょう

会社や仕事に身を捧げられない人もいると書いたことは素晴らしい

「乾けない世代」自体は、若い世代には共感できる話でしょう。私もそういう考え方です。

上の世代は、頑張って何かを達成することが生きがいです。必死の思いで働いて、ウン年モノのワインで美女と乾杯し、誰よりもいいクルマに乗る。努力の末に栄光を勝ち取り、称賛を浴びる。「達成」こそが、彼らにとって生きるうえで欠かせないモチベーションになっているのです。

彼らの幸せは、達成しても達成しても永遠に乾くことのない欲望を抱えていられることでもあるのです。乾かない欲望を持ち続けることが成功の条件とも言えます。その裏には、「なかったことへのコンプレックス」があります。上の世代の成功者と言われる人たちはみな貪欲です。だからこそ、彼らの目に映る「乾けない世代」は、欲が足りないように見えてしまうのです。コンプレックスをバネにしてこそ輝くのが、上の世代の美学なのです。

一方、「乾けない世代」は、何かを「達成」することにそれほど心を動かされません。なぜなら、「何もなかった時代」を知らないからです。生まれたときにはテレビも冷蔵庫もあって、ベッドから起き上がらなくたって、リモコンやケータイひとつでなんでもできました。社会に出てみたら、もうあらゆる業界で、あらゆることがなされており、今から何かのパイオニアにはなれそうもない。

生まれたときから十分なモノに囲まれて育った彼らは、「ないものを勝ち得るために我慢する」という上の世代の心理は理解できないのです。さらに言えば、彼らは上の世代に対し、「達成」にこだわることのアンバランスさを感じてもいます。

この本の良いところは、会社のために、仕事のために身を捧げてお金を稼ぐことに意味を持てない人もいる、ということを書いたことでしょう。若い世代には「私だけじゃなかったんだ」と共感を呼べる。

でもその「乾けない世代」の浅い分析は10年以上も前から言われていたことです。新しくありません。

若い世代以外にも、最近の時代の流れでそういう考え方になった人もいると思います。そういう人はこの本ではちょっと疎外感を感じてしまうことでしょう。考え方ではなく「若い世代」で括られてしまっています。

タイトルに釣られて本を読むと、情報の浅さに驚く

さて、そういう人もいることを書いたことは素晴らしかったのですが、そういう人はどうしたら良いのかが全く書かれていません。こういう人がいるよ、と書かれているだけ。

「モチベーション革命」というタイトルですが、これは「以前とは仕事に対する考え方が変わっている」というだけのことで、革命というほどのことではありません。また、副題の「稼ぐために働きたくない世代の解体真書」ですが、浅い説明しかないため「解体真書」とまで言い切るのは言い過ぎです。

また、人の意見の引用がほとんどを占め、筆者が考えて書いたものではありません。この本は人が言ったことを編集して載せている、いわゆる「まとめ」をした本です。筆者の鋭い考察・意見などはありません

この本では筆者の経歴が所々書かれています。「マッキンゼー、リクルート、Google、TEDxからドコモ、楽天」。この経歴で権威付けを行っています。以前の仕事の自慢を交えて書かれているのですが、正直なところ、その輝かしい経歴でこの程度のことを書いているのが不思議です

「マッキンゼー、リクルート、Google、TEDxからドコモ、楽天」を経て、この程度のことしか書けないのか、…書かないのか。「乾けない世代」の分析も甘く、何故そうなったのか、どうすればいいのかを書いていません。ものすごく不思議です。経歴を書かない方が良さそうです。書かれた会社のイメージダウンです。

この本は平易な言葉で書かれていて読みやすいのですが、情報がかなり浅い。中高生に宛てて書かれている本なのでしょうか。この本の情報鮮度は本当に短いでしょう。

インターネットで全くニュースを読まない人や、インターネットをほとんど使わない人は勉強になるか

この本で紹介されているのは Google、Facebook、Amazon、Apple など、IT関連会社のことが多いです。それも浅い情報ですが…。普段、新聞やテレビだけで情報を得ている人は全く知らない事が書かれているかもしれません。

ネットをある程度やっていてニュースサイトを読んでいれば、この本に書かれていることのほとんど知っていると思います。

自動車の共有サービス Uber の説明が所々に書かれていますが、さすがに知っていますよね? もう数年以上前から話題になっていたのですから…。

最後が最悪。結局「若い世代は会社でひたすら仕事をするのみ」

前半「稼ぐために働きたくない世代」がいる、ということが少ないですがメインに書かれていたのですが、この本の最後にある、新社会人に向けての言葉はこれでいいのでしょうか…。

もしあなたがまだ新社会人ならば、まずは目の前の仕事をひたすらにこなし、集中することを優先してください。誰よりも熱意を持って目の前の仕事に時間をかけ、他の人との差によって「この人にはお金を払ってもいい」と会社に思ってもらえるだけの仕事をすることを、まずは頑張りましょう。好きなことで生きていく前に、まずは自分が食べていける足場をきちんとつくること。そこからじっくり時間をかけて、「ライフワーク」を磨いていけばいいのです。

目の前の仕事に熱中できないから悩んでいるのが「稼ぐために働きたくない世代」ですよね?

この本で言いたいのは筆者の仕事や生活の自慢なのでしょうか。筆者が日本に縛られない生活をしているのはよく分かりました。たくさん書かれていますから。

しかし、「稼ぐために働きたくない世代」は、どう生きれば良いのかを知りたいのです。この本は「稼ぐために働きたくない世代」のさらりとした紹介だけで終わってしまっており、何とも浅い内容の本になってしまっています

「好きなことを突き詰めれば良い」というのは多くの人が気付いていることでしょう。もはやその答えは一般的で当たり障りのない回答で、何も言っていないのと同義です。それを長々と書いてももう説得力がありません

小学生が将来 YouTuber になりたいと言っている時代です。YouTube で稼ぐ事が書かれていない本書は小学生の情報にも劣る。

Kindleの本にはレビューを書いて貰って評価を水増しする本もあるのですが、その類いの本かと疑ってしまいました。

この数年前の情報がためになったとして高評価を与えているレビューが多いのは本当に不思議です。

数百円の本ならこんなものかと思うのですが、単行本で1620円です。ちょっと首をかしげてしまいます。立ち読みするか、電子書籍で安く買うか、読み放題で無料で読んだ方が良いでしょう。前半の前半だけ立ち読みすれば十分です。あとは読まなくても何の問題もありません。ページ数を増やしたかっただけでしょう。

Googleでこの本を検索してみると、この本を利用して自己表現する人が多いのでそういう用途には丁度良さそうです。


モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書 (NewsPicks Book)