「ラウドネス・ノーマライゼーション」って知ってる? 音楽ストリーミングサービスがこの方向へ
「音圧を稼ぐのが面倒…」と思っている私に朗報でした。最近は「ラウドネス・ノーマライゼーション」が徐々に浸透してきているようです。
「ラウドネス・ノーマライゼーション」とは読んでその通り、音圧によってノーマライゼーションを行うこと。音楽などは実際に聴いたときの大きさ(ラウドネス)がまちまちなので、それを音圧を計算することによって同じにしようという試みです。
音圧がすごく高い曲から低い曲へと連続で聴くとき、リスナーが自力で音量を弄るのは面倒です。「音が小さすぎ」「音が大きすぎ」と感じる度にボリュームを上げ下げするのは非常に面倒です。現状はこれなのですが…。
Apple の iTunes Radio や YouTube でこのラウドネス・ノーマライゼーションが行われ始めたとのことです。今後音楽のストリーミングサービスが流行っていくでしょうから、ラウドネス・ノーマライゼーションはもっと重要になるでしょう。
Foobar 2000 などの音楽再生ソフトでは以前からノーマライゼーションという考え方がありましたが、こういうのはちょっとマニアックなソフトで知られていないかもしれません。Windows で主に使われていたソフトウェアでしたし。Foobar でのノーマライゼーションのコンポーネントはこちら。
音楽をスマートフォンなどで聴かない人も、テレビの音の大きさでこの問題を感じているはずです。テレビの番組を見ていて、CM に移ったら急に音が大きくなったという経験があると思います。私は CM になるたびに音量を下げていたこともあります。非常に煩わしいです。こういうのもテレビでの「ラウドネス・ノーマライゼーション」が行われれば全く問題なくなります。
あまり音圧を稼がなくて良い!
そんなわけで、「ラウドネス・ノーマライゼーション」が行われるようになるなら、一定以上は音圧を稼ぐ必要が無くなります。頑張って音圧を上げても、どうせ後で音量が下げられてしまうわけです。有り難いことです。
私は音圧を稼ぐのが面倒です。素人なので時間がかかりますし、勉強しながらになってしまいます。私は音圧を稼ぐために音楽を作っているわけではなく、出来れば音圧稼ぎはしたくないです。素人にとっては音圧は一つの壁です。それをしなくて良いなら何と楽な話なのでしょう。
どの程度の音圧を目指せば良いの?
こちらのサイトで「ラウドネス・ノーマライゼーション」について非常に分かり易い解説が読めます。その中で一つの答えが書かれています。
収録レベルの話:Studio Gyokimae
さて、今後作成した曲をどのぐらいのレベルで収録すればよいかについては、これまでのところ明確な基準や規格が提示されていません。そこで、一つ提案させていただきます。
目標値として-16LUFSなどはいかがでしょうか?
先のように、これより高いレベルで収録されたものは、SoundCheckに掛かるとレベルを下げられますが、変化幅は最小にとどめることができます。
逆にこれを下回ると、ラウドネス・ノーマライズ時にレベルが上げられる可能性があり、もしピークがすでに0dBFS付近にある場合、増加分によりD/Aコンバータをオーバーロードさせるおそれがあります。
... 第一に、過度にピークを潰すことにより開放感や躍動感を削ぎ、楽音と相関のない倍音を付加することの方が、マスターの有効ビットを1つ2つ削るより遥かに多くのものを、演奏やアレンジから奪うと私は思います。
不安があれば、試しにご自身の作品をマキシマイザ(および、辻褄合わせのためだけに挿したEQやマルチバンドコンプ)有り、無しの二バージョンを用意し、DAWに並べてLUFS値が-16.5に揃うようにレベルを調整し、A/B比較してみてください。 どちらの方が気持ちよく聴くことができますか?
身近な方に、背景は説明せずに聞き比べてもらい、意見を尋ねるのも面白いかも知れません。
「-16 LUFS」。LUFS は音圧測定の時の単位です。何故「-16」という数字にしたのかの判断材料も引用の上の方に書いてあります。
上記の規格が制定された2012年、欧州の放送業界ではいち早くラウドネス基準が運用されることになりました。
これにより、放送されるあらゆる番組のラウドネスは、-23 LUFS ±1の範囲内になければならないと定められました。
...
SoundCheckが用いているラウドネス検知のアルゴリズムやターゲットとする基準レベルは公開されていません。各国のエンジニアが分析した結果ですが、どうもITU-BS.1770やEBU R128に近い計測方法で、-16.2~-16.7LUFS程度になるよう調整されているようです。
自分の作品がSoundCheckによりどの程度影響を受けるか検討する場合は、だいたい間をとって-16.5LUFSを参照値としてよいかと思います。
...
2014年12月よりYouTubeが、アップロードされた作品に対してラウドネス・ノーマライゼーションを行うようになりました。
使用されているラウドネス検出のアルゴリズムは、前述のITU-R BS.1770-3、EBU R128のいずれとも異なるようなのですが、いろいろな方が実験を行った結果、どうもこれらの基準で-13LKFSに合わせたときに近いレベルに揃えられるそうです。
これにより、少なくともYouTubeに掲載する音源については、聴感レベルを上げるためだけに-13LKFS以上のレベルで収録することは、デメリットしかなくなったといえます。
まとめると、欧州では -23 LUFS、Apple 社のものでは -16.5 LUFS、YouTube では -13 LKFS でノーマライゼーションされているようです。Apple 社を重要視して -16 LUFS ということでしょう。
市販曲がどのくらい音を下げられてしまうかがこちらにまとまっています。Perfume の「ポリリズム」は iTunes で -11.5 dB 下げられます。良くぞここまで音圧を稼いだ、という感もありますが iTunes ではかなり音が下げられてしまっています。
K-12 を目指そうと思います
ラウドネス・ノーマライゼーションと反音圧戦争の話を読んで、私は K-System が良さそうだと感じました。
収録レベルの話:Studio Gyokimae
[K-System は] マスタリング・エンジニアであるBob Katz氏が2001年頃に提唱したワークフローです。
マキシマイズによる音質劣化が加速しつつあったことを懸念して考案されたもので、アプローチが大変個性的です。
核となるのは氏が独自に考案したユニークなRMSメータ「K-Meter」で、これの使い方を詳細に規定することにより、オーバー・コンプレッションの問題にとどまらず、モニター環境にまつわる問題までもを一挙に解決することを試みたのです。
このシステムに従うと、まず作業中にピーク・メータを見る必要がなくなるため、アナログ時代と同様にVUに似た、しかし目盛りの打ち方が若干異なるRMSメータと耳だけを頼りにマスタリングまでを行うことができます。
また、ピーク・レベルを意識する必要がないということは、近付くべき0dBFSの天井も存在しないため、「音圧を上げるためだけのマキシマイズ」やそれに伴うサウンドの劣化を回避できます。
ちなみに K-System のラウドネスメーターは簡単に手に入りますし、色々なアナライザーにこの基準が搭載されています。無料のものだと「Voxengo SPAN」が有名のようです。
私は K-System の中の K-12 という基準にしようと考えました。これは -16 LUFS よりも少し大きい音圧です。何故 K-12 なのかというと、音圧を稼ぐ過程でミキシングやマスタリングを少しは学べるということと、音圧が高い音の方が聞きやすいからです。
確かにコンプレッサーやマキシマイザーで音を潰すと確かに元の音が平面的になってのっぺりし、ダイナミクスは失われます。しかしその一方で、空気感がなくなり音が近くなって音が聞きやすくなる感じがあります。これは私の感覚なので間違っているかもしれませんが。
ということで、私は音圧を少しだけ稼ぎつつミックスするようにするため、K-12 という基準でやってみようと思います。