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予想も付かないラストシーン。神様が示す真実とは…『神様ゲーム』

麻耶雄嵩
講談社 (2015/7/15)

予想を遙かに超えたラストでした。この小説は児童向けに書かれた本らしく(主人公は小学4年生)、最初はよくある少年探偵団ものとしてストーリーが進んでいきます。最近このあたりに猫を惨殺して回っている人がいるらしい。調べてみようか。

ほのぼのとしたストーリーになるかと思いきや、「神様」が現れます。普通のクラスメイトです。物静かで、転校してきたばかりで、あまり人とも話さない。トイレ掃除でそのクラスメイトと話してみますと、突然自らを「神様」だと話します。

この世界に神様が?

私はこの小説を読む前、タイトルから「自らを神様と名乗る犯人が行う犯罪」という感じのストーリーかなと想像して本を買いましたが、全然違いました

最初は神様を疑いつつも話を聞きますが、通常は知り得ないことに妙に色々に詳しく、未来のことも淡々と話し、「僕がそう作ったからね」と説明します。うーん、彼は本当に神様なのだろうか。それともその振りをしているのか。神様は退屈らしく、主人公と戯れに会話しているようです。

じゃあ神様に猫殺しの犯人を訊いてみようか。すると簡単に犯人を答えます。少年探偵団と神様の言葉とで事件の真相に近づいていきますが、そこでもう一つ大事件が起きます。クラスメイトの死です。自分たちが探偵団の基地にしている場所で。

神様は「天誅」を下せると言います。「君との会話は楽しめたから、お礼に犯人に『天誅』を下してあげようか?」。「天誅」という単語を読むのは久しぶりです。読んでいると怪しい人物はすぐに分かると思いますが、その人物に「天誅」が下り、犯人が事故死します。

「天誅」は真犯人を告げる答えです。主人公や読者は色々と推理しますが、「天誅」で答え合わせです。というよりもむしろ主人公は「天誅」で答えを知ってから、推理を行います。ここは普通のミステリ小説と違います。主人公の推理は頼りないのです。事件の全容はまさに「神頼み」です

「天誅」によって神の力を見せつけられ、どうやら「神様」は本物らしい…。ここで、「神様」が語る言葉がすべて真実だということになります。分からないことを神様に訊けば真実を答えてくれます。

ミステリー小説としてはかなり異端です。答えを知っている存在に、真実を訊いてしまうのですから。

予想を超えるラストシーン

終盤は怒濤の展開でした。中盤まで、つまりクラスメイトの死の犯人までは想像通りだったのですが、そこから「えっ?」という展開ばかり。主人公も私も犯人が分かった気になっていましたが…。

最後の最後のシーンは、私にはよく理解できませんでした。「事の真相はこうだ」と言わんばかりに終わり感を醸し出して文章が綴られますが、最後に「えっ」。真相の解釈は読者に委ねられるのか、私の理解不足なのか。ここの答えが欲しいです。

神様は「犯人に天誅を下せる」と言っていました。主人公がお願いしました。「天誅」とは何ぞやと考えねばなりません。ここは語られていませんので、想像するしかありません。

パッと思いつくだけで3パターンあります。「天誅」は犯人の「死」を伴うのか、「苦しみ」を伴うのか。それとも、犯人の数が…? 真実は神のみぞ知る、のでしょうか?

児童向けじゃないよ

この本は児童向けに書かれたようですが、私は児童が読むのにはお勧めしません。子供が読んだら「赤ちゃんはどこから生まれてくるの?」よりも難しい質問をされるかもしれません。

また、私は主人公たち小学生の会話が高校生の会話かと思うシーンがいくつもありました。ちょっと知的すぎますね。そういう意味でも児童向けではない気がします。大人からするとすらっと読める文章ですが、子供が読むにはちょっと難しいかもしれません。

この「神様ゲーム」には続編が出ているようです。もう少し安くなったら買ってみます。

麻耶雄嵩 (著)
文藝春秋 (2014/8/10)
麻耶雄嵩
講談社 (2015/7/15)