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読書習慣を付けたい。…マンガも本だよね?

圧倒的な練られた設定。頭の良い展開。面白すぎて読まないと損『亜人』

桜井画門(著), 三浦追儺(著)
講談社 (2013/3/7)

ちょくちょくマンガを読んでいるのですが、「亜人」はすごく面白いです。絵もうまいし、何より設定とストーリー展開が面白い。読んでいない人がいたら本当にお勧めします。

去年あたりに初めて読んですごいなぁと思い、最近見たら巻数が結構進んでいました。現在9巻まで出ています。

ちょっと紹介

「亜人」というのは文字通り「人でない」という意味で、死んでも生き返る存在です。どうして亜人が存在するのかは不明で、亜人かどうかは死なないと分からない。

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主人公はトラックに轢かれて亜人だと分かります。亜人のことはまだあまり分かっておらず、研究対象で、警察などに捕まると人体実験をさせられてしまいます。周りの人も亜人を捕まえるとお金がもらえるので我先にと主人公を捕まえようとします。

逃げ出す主人公。大勢から逃げるのは難しい。でも主人公には仲間が一人だけいます。むかし友達だった同級生。親に彼とは遊ぶなと言われ、そこから話していません。でも彼の方から助けてくれます。

彼と共に何とか逃げられるのですが、主人公は亜人の他のグループに捕まってしまいます。これが1~2巻くらいのところ。

設定を利用する展開が面白い

面白いマンガはやはり設定が面白い。「亜人」もそうです。亜人は死にません。死んでもすぐに生き返る。死ねば傷はすぐに治る。では亜人に対抗するにはどうするか?

警察や戦闘部隊は亜人を捕まえるために麻酔銃を使います。眠らせれば取りあえず拘束できる。

亜人を虐げる人間たちを殺したいという過激な亜人はどう戦うのか見て下さい。

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麻酔銃が刺さってしまいました。どうする?

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はぁー、なるほどね! すごく頭が良いです。

腕は切断できるけど、切断できない箇所に麻酔銃が刺さったら…?

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正解は眠ってしまう前に自ら銃で頭をパーンです。亜人は死ねば体の状態がリセットされます。自ら死ねばいいのです。

こんな感じで、このマンガは亜人は死なないという設定を見事に利用するシーンの連続です。すごくワクワクします。

作者が設定を練ってあるのでしょう。「亜人は死なない」から導き出される疑問をしっかり考えてあります

例えば、亜人は死なないと言うが、頭を切断されたらどうするのか。これ、思考が読者の一歩先を行っています。

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「亜人は死ねば体が再生される」という設定があり、「頭が吹き飛んだら脳も再生される」。では「頭が再生されるということは、再生した後は本当に自分なのか」という問いが生まれる。それは「死であろう」というのが上のシーン。

そういえば、鋼の錬金術師でもこのようなシーンがありましたね。「弟が錬金術によって構築させられたとしたら、記憶も改ざんされているのか?」。

私は読みながら上の「頭を切断させられたら…」というところまで考えていませんでした。ものすごく展開が早い。でもこれでいいのです。

なぜなら、上の場面で主人公が戦っている亜人はずっとこういうことをしているのでしょう。ですからほんの少し前にやっと亜人だと分かった主人公よりも、さらには主人公の視点からストーリーを見る読者である私よりも、亜人に詳しくて当然。こんなにも経験と知識の差があるんだと分かるシーンです。見事。

主人公が頭が良い

私が好きなパターンのマンガに、主人公の頭が良いというのがあります。私はしっかり考えて行動してくれる主人公が好きなのです。

ですから Death Note の主人公は好きですし、小説だと貴志祐介さんの小説は好きです。最近は「ハーレムうはうはー」「でも心だけは綺麗な主人公」というマンガが多すぎて疲れます。

「亜人」の主人公は頭が良い。合理的に物事を考え、行動します。

これだけでも嬉しいのに、これをさらに面白くしているのが、主人公がサイコパスっぽく描かれていることです。

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サイコパスは比較的最近流行ってもう聞かなくなった言葉だとは思いますが、私はそれ以前に「良心をもたない人たち」という本を読んで知っていました。


良心をもたない人たち

この本の中で印象的なのは「頭の良い、良心のない人はものすごく厄介」ということ。対処法は「良心がないと分かったら近付かないこと」らしい。

良心がない人は人の痛みが分からないので、人を攻撃したり、人を利用できます。そういう事に罪悪感がないのです。自分の心でブレーキが掛かりません。頭が良ければそれらをもっとうまくやってのけます。そういう存在。

主人公がちょっとそれっぽく描かれています。ただ頭が良いので上っ面ではうまく処世している。

物語の展開としては、そんな主人公が他人に気を遣うシーンがたまたま入り込んできていて、そういう感じの成長を見せる展開になるかもしれませんね。

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亜人は「黒い幽霊」を出せます。これはまだあまり語られていません。この「黒い幽霊」は基本的には亜人にしか見えない。普通の人は見えません。

この設定を見事に利用するシーンが後に描かれます。亜人にしか見えないことを利用するのです。ちょっと Death Note と似ていますね。

でも「黒い幽霊」そのものを利用するのではありません。幽霊を形作る物質を使うのです。お楽しみに。

読まないと損

こんなに引き込まれるマンガは久しぶりです。絵もうまいし、ストーリーもうまいし、もう言うことはありません。読んでいない人がいたら是非読んでみて下さい。

上の麻酔銃のシーンでは何故腕を切断するか説明されません。でも設定を理解していれば分かることです。こういう場面で説明を省くところが良いですね。意気揚々と語り出す展開は醒めてしまいます。

私としては主人公が心の成長を見せる方向にはあまり進んで欲しくないです。一般的にはそういう展開が求められるとは思いますが(映画とかアニメとかにしやすいし)、私は心の成長をしないストーリーでもいいです。そっちの方がユニークです。

『亜人』は本当に名作の予感です。出会えて良かった。早く続きが読みたい。でも設定や展開を練って欲しいので作者を急かしたくない。

HUNTER×HUNTER よりも頑張ってくれさえすれば…。いやそれだと遅すぎるか。

HUNTER×HUNTER って私が死ぬ前に完結するかな?


亜人(1) (アフタヌーンコミックス)


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[まとめ買い] 亜人(アフタヌーンコミックス)