『ソロモンの偽証』にみる大人への不信。誰を信じたらいいの?
『ソロモンの偽証』という映画を観ました。以前から観よう観ようとは思っていたのですが、やっと。
映画は前後編に分かれており、見終えるまで結構長いです。最後まで観られるかなぁと思いながら観はじめたのですが、前半が面白くて「後半も観なきゃ!」と引き込まれてしまいました。
この映画は中学校で発生した同級生の転落死の謎の真実を、生徒のみによる校内裁判で暴こうとしていくというストーリー。宮部みゆきさんの小説が原作。原作は読んでいません。
大人たちがダメダメ
なぜ生徒のみで校内裁判を開こうとするのかというと、学校の教師が信頼できないからです。
死亡していた同級生を自殺と断定し、これ以上はことを騒がせたくないという校長・教師たち。校長は警察からの調査も「これで終わりで」とムリヤリ終わらせる。
主人公の女性は死亡した同級生に言われた言葉「いじめを止めようと言っていた人が、いじめを見て見ぬ振りをするなんて偽善者だ」が心に刺さり、「私達で事故の真実を探ろう」と発起します。
でも主人公の両親は保守的で、「そんなこと止めなさい。あなたらしくない」と言う。それに対し、主人公は「私らしいって何?」と返す。
ある生徒は死んだ同級生の死の真実を知っているとして告発状を匿名で複数の人宛に投函したのですが、その親も子供を変に保護している。子供を信じず、身勝手に子供を守ろうとする。
学校の教師たちは怪しいからという理由で教師一人を追い込んで止めさせる。主人公が真実を知りたいと教師に話したら、教師たちは口で言っても主人公がやめようとしないから暴力でやめさせようとする。
ダメな大人のオンパレード。観ていると本当に残念な気持ちになります。
大人が信頼できないから子供だけで裁判をやってしまおうというほど、大人への信頼がないのです。
社会を反映している
でもこれって現代の社会を反映しています。
教師が犯罪をするし、隠蔽をするし、校長もいじめを隠す。警察官も犯罪をするし、隠蔽しようとする。警察・検察は権威を護持するため、身内の犯罪を隠す。政治家は罪を犯しても十分に罰されない。
親は親の都合で子供の悩みに向き合わないし、子供に自分の価値観を植え付ける。育児放棄の親もいるし、虐待もある。
子供はどの大人を信頼すれば良いのでしょう? 非常に難しい問題です。
この映画では、教師たちは校内裁判を止めさせようとする中、一人の教師だけが裁判を開くのを助けてくれました。
主人公たちはこの教師をどうやって見つけ出したのでしょう? 映画では省かれていましたが、本当はここがもっとも重要なところです。
どうやって信頼できる大人・上司・人を見つけ出すのか?
私はマイナス思考というか、最悪の状況をシミュレーションしながら行動することが多いので、ぜひ信頼できる人の見つけ方を知っておきたかった。
「実は犯人を見たんです」と話したとき、信頼して話した相手が悪い人のこともあると考えてしまいます。ミステリーでもたまにありますよね。
相手は証拠を受け取っておいて真実をもみ消したり、実は味方ではなくて殺されたりしてしまうかもしれません。
映画で「あなたの暴力を教育委員会に言いますよ」と言って教師を抑制する場面があるのですが、その教育委員会は果たして信じられるのでしょうか。
こうやってマイナスを考え出すと切りが無いのですが、2016年に電通の社員が自殺した事件でも当人は周りに相談できなかったのではないでしょうか。直属の上司からはハラスメントがあったわけですし。
学校ではイジメが顕現化してやっと問題になっていますが、いじめられている人も信頼できる人がなかなか見つけ出せずに自殺してしまうのではないでしょうか。
子供に限らず、誰しも信頼できる人を見つけ出すのが難しい。普段から信頼できる人を見つけておかねばなりません。
映画ではうまくいったけど…
映画はほぼハッピーエンドで終わったと思いますが、実際はこんなにうまくいかないだろうなぁと思ってしまいます。生徒の行動にかなり無理があるのでリアリティはそんなにないです。
物語の核心である裁判は学校で5日連続で開き、教師、保護者、生徒を連続で参加させていて、そもそもかなり無理があります。
ですが、大人が信頼できないというメッセージは痛いほど感じます。
今は生徒のためを考える教師がどのくらいいるのでしょう? 私が過去に出会った教師にはそういう人はほとんどいませんでした。
自分の価値観を押しつける教師が多かったですし、体罰も当たり前。クラスで何か問題があったらクラス全体を巻き込んで公開処刑。あぁ小学校はとくに面倒だった。
私は教師をあまり信頼できませんでした。
そういう事もあり、この映画は学校関係者や子供を持つ大人に観てもらい、考えてもらいたいです。
今の日本では「大人を信頼しろ」とは言えない状況ですから。
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