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「中3で25%が教科書理解できない」、でも読解テストの問題文が少し悪い

中高生の読解力不足を指摘する調査がありました。問題文がどんなものか知りたかったので調べてみました。

中3「教科書理解できない」25%…読解力不足 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

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 新聞や教科書などを読み取る基礎的な読解力を身に付けられないまま中学を卒業する生徒が25%にのぼることが、国立情報学研究所(東京都)・新井紀子教授らの研究チームの初調査で明らかになった。

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 調査は2016年4月~17年7月、全国の小6~社会人を対象に、独自の読解力テストを実施。公立・私立中高生2万1000人の結果を中心に分析した。

 主語や目的語など文章の構造が理解できているかを問うタイプの設問群で、中学1年の正答率は62%、中学2年が65%、中学3年が75%となった。

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調査の問題文が気になりますよね。問題文は国立情報学研究所のサイトにあるようなものらしいです。

文章を正確に読む力を科学的に測るテストを開発/産学連携で「読解力」向上を目指す研究を加速 - 国立情報学研究所 / National Institute of Informatics 

実際のテストの問題とは違いがあるとは思いますが、ちょっと見てみましょう。

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PowerPoint プレゼンテーション - press_20160726-2.pdf

そんなに難しい文章ではありません。物理の波の説明文の正答率が低いですが、C、Dを選んだ人が少ないのでそこまで重大な間違いではないかもしれません。

文章の読み解きに少しの知識が必要

私が難しいかもと思ったのは次の問題。

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Bのアミラーゼを選んでしまった人がかなり多いです。

ちょっと間違いを想像してみますと、この文章を

アミラーゼは x を分解できる、しかしセルロースは (x を) 分解できない

x = デンプン

という目的語が省略された対比の構文として読んでしまうと、「セルロースはアミラーゼとは違う」と導けます。

この文章を読むには「酵素」の知識が少し必要です。「知識がなくても問題が解ける」という前提の読解力テストですので、知識が前提になっているのでは都合が悪いです

知識なしでも文章だけでも「『酵素』は「分解する」もの』までは分かると思いますが、酵素とグルコースの関連付けるには酵素の知識が少し必要です

または文章から推測しなくてはなりません。しかし、アミラーゼが分解するものが「グルコースの繋がり」ではなく、「デンプン」だと読んでしまう可能性があります。そうすると続く文章の読み解きに支障が出ます。

さらに、知識がなければ「セルロース」を「グルコースからできた『酵素』の名前」かもしれないと読んでしまうかもしれません

セルロースを酵素だと思ってしまうと上で書いた「アミラーゼ」と「セルロース」の対比構造になってしまいます。

「セルロース」の『は』が、この文章の読み解きに重要なポイントで、知識がない人にとってくせ者だと思うのです。「セルロース」を主語として読んで誤読してしまいます。

ですから、読みやすいように文章のてにをはを変えるのはどうでしょう?

アミラーゼという酵素グルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロース分解できない。

これだとアミラーゼとセルロースの対比の文章だとは思いません。「は」の持つ強調・対比の意味はなくなりましたが、分かりやすいと思います。ちょっと文章がおかしい気がしますので、文章を二つに分けた方が良いかも…。

それか読点の位置を変える。

アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても形が違うセルロースは分解できない。

こちらだと文章の構造が分かりやすいです。いかがでしょうか。てにをはとか読点を変えるのではなく、文章を変えてしまった方がいいのかも。

日本語よりも英語の方が文章の構造が分かりやすいのかもとちらっと思ってしまいました。

分かりやすい文章って難しいです。私も分かりにくい文章を連発して書いていることでしょう。