幸せを捉え直すだけで本当に良いのか?『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』
話題になった「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」。Kindle で安くなっていたので購入しましたが、読んでみたら驚きました。絵本なのです!
Amazon でポチッとボタンを押して買っただけなので絵本だとは気付きませんでした。まぁいいんですけどね。短いので非常に読みやすかったです。
この本はウルグアイの大統領のムヒカ大統領がリオ会議でスピーチしたことが子供向けに翻訳されたものです。
ただ話の内容としては子供には理解できないと思います。内容がちょっと難しいのです。大人には簡単だとは思うのですが、子供が理解できるかというとそうではありません。
上のページの一言は強い言葉です。
今日の午後ここでずっと話されていたことは、人類がこの先、地球の自然と調和しながら生きて行くにはどうしたらよいのか、そして世界から貧しさを無くすにはどうしたらよいのかということでした。
しかし一方で、私達の頭には何が浮かんでいるでしょう。もっと豊かになって、欲しいものがどんどん手に入る、裕福な社会を望んでいるのではないでしょうか。
会議に参加しているほとんどの人が裕福な暮らしをしたいでしょう。
そしてこうたたみかけます。
人より豊かになるために、情け容赦の無い競争を繰り広げる世界にいながら、「心を一つに、みんな一緒に」などという話が出来るのでしょうか。
会議に参加していた人がムカッとしたことでしょう。
「幸せを見直そう」
ムヒカ大統領が言いたいことは、「欲しいものを欲望のまま手に入れていくのが幸せではないんだよ、幸せとは何かを見直そう」ということです。
私達が "幸せ" になる為には裕福さを追求しなくてはならないが、人類全体が裕福な暮らしをしたら資源がなくなってしまう。
確かに言いにくいことではありますが、現段階では本当にみんなが同じように裕福になったとしたら地球の資源がすぐに枯渇してしまう。絵本の中にもこの考えが出てきます。「インド人がみんな車に乗るようになったら呼吸をするための酸素がどれだけ残るだろうか?」。
貧しさを後進国へ押しつけてしまっている
この視点にはなるほどなと感じました。日本などは裕福な生活を享受する一方で、貧しさを貧困国へ押しつけてしまっているのかもしれません。
裕福な暮らしが出来るのは資源があったり色々な技術が進んでいたりする国で、そうではない後進国は先進国がたくさん資源を頂いた後を追いかけるので不平等さが存在します。なので発展途上国へ資金提供や技術提供をするわけです。
みんなが裕福になることは良いことだと思いますが、現段階では難しい。結局、イノベーションが必要になると思います。技術の進化によってローコストで裕福な暮らしを出来るようになると理想的です。
先進国などは労働力が国内よりも安いからといって労働力が安い国へ仕事をさせるわけですが、こうした差が無いと経済が成り立たないのです。東南アジアなどで作られせているものと同じものを日本で作ったらコストが高くなりすぎます。だから私達は安く買えるわけですが。
心を変えるだけでいいのか?
ムヒカ大統領は幸せを見直すことで貧困問題を解決しようとしていますが、それは物質的な豊かさを手に入れたわけではありません。心の豊かさです。
私は仏教を思い出してしまったのですが、仏教は欲を制御して諦めるというような考え方があります。これで本当にいいのか考えなくてはなりません。
「酸っぱいブドウ」と同じことになってしまいます。手に入れられないものは諦めて、心の方を変える。それは装置として有効に働くと思いますが、貧しい中で心の豊かさを得て暮らす一方で、物質的な豊かさを享受している人もいる。
もちろんそうした物質的な豊かさを得ている人が心が幸せであるとは限らないのですが、やはり貧しい人も同じレベルで物質的な豊かさを享受できないと不平等ではあります。生まれた国によって裕福か貧しいか決まってしまいます。
これが貧困問題ですが、どうやって解決するのでしょう? ムヒカ大統領の提言は幸せを捉え直そう、ということですが、私はインド人もみんなが車に乗れるようになればいいなと思います。これは技術の進化によってもたらされます。
頭の良い人がパラダイムシフトを起こしてくれないかな。